公的年金は主に国民年金と厚生年金に分けられますが、このうち国民年金はあらかじめ年金機構が定めた日付で支給されます。ところで、この支給に関しても支給までの流れ、支給方法、そして受給者が亡くなった場合などの対応などが一定の取り決めがされており、今後の年金に対する見方にも影響するほどのものといえます。今回は、この公的年金の支給に関することを紹介します。

目次

公的年金の支給日


公的年金の支給日は次の通りとなっています。

支払月は偶数月で年6回ある

支給月は原則として偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)となり合計して年6回となります。奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)では支給されないと覚えておいてもよいでしょう。

ただし、初回の支給に関して後述に記載の通りのこともあるため、ケースバイケースもあり得ると考えても差し支えないでしょう。

支払月の15日に振り込まれる

支給月は偶数月ですが、支給日は原則として15日となります。これは法律に基づいて定められているため、原則として16日以降にずれこむことはありません。

前奇数月までの2か月分支払われる

年金の支給月が偶数月ということもあり、支給される年金の金額は次の通り「支給月の前々月と前月の2カ月分」となります。

2月 :12月、1月の2か月分
4月 :2月、3月の2か月分
6月 :4月、5月の2か月分
8月 :6月、7月の2か月分
10月 :8月、9月の2か月分
12月 :10月、11月の2か月分

ただし、初回の支給に関しては後述に記載の通りのこともあるため、ケースバイケースもあり得ると考えても差し支えないでしょう。

種類に関わらず支払日は同じである


国民年金は、国民年金の中核とも言える老齢年金はもとより、遺族年金や障害年金など他の種類の年金との兼ね合いもあって支給日のずれが生じることを懸念する人もいるかもしれません。しかし、支給日は変わらず偶数月の15日となっています。

なお、65歳以上の人の年金には「一人一年金」の例外に該当するため、老齢年金と遺族年金が同時に支給される場合がありますが、それでも原則として支給日がずれこむことはありません。

年金の支給日が休日の場合

年金の支給日である偶数月の15日が、土曜日や日曜日または祝日と休日だった場合の支給については次の通りです。

直前の平日に行われる

年金の支給日は、原則として直前の平日となります。例えば、15日が土曜日であれば14日、15日が日曜日であれば13日となります。「年金は会社の給与支給と同様に平日に支給されるもの」と覚えておいてもいいでしょう。このため、特に13~15日は金融機関やコンビニのATMなどに受給者が殺到して混雑することがあります。

土日でない8月15日は支給日となる

偶数月の中で、比較的気にされがちなのが8月の支給日です。これは、「お盆休みの時期に被ることでもしかしたら支給がずれこむのでは?」と懸念されることが多いためです。しかし、年金支給はそれらとは関係なく偶数月の15日に支給されます。

もちろん、8月15日が休日であれば、前述のルールに基づき直前の平日に支給されます。

初めての年金支給日の流れ

初めての年金支給は次の流れで行われます。

誕生日の前日から受給資格を持つ

国民年金の受給資格は「65歳に達した日」と定められていますが、具体的には「誕生日の前日」からとされています。例えば、9月18日が誕生日であれば9月17日がその日になります。また、9月1日であれば8月30日がその日になります。

誕生日月の翌月から支給開始される

年金の支給開始月は「誕生日月の翌日から」となっています。ただし、それまでに前述の受給資格を満たして年金の受給権を得る必要はあります。

それらを踏まえた上で、次の事例を通して実際の年金の支給について紹介します。

 65歳を迎える誕生月日が9月18日である場合
1. 9月17日が65歳に達した日として年金受給権が発生する
2. 9月が受給権発生月となるため、10月分からが支給対象となり10月15日に支給される
3. その次の支給からは2か月後の12月15日となるが、その際は10月分と11月分が支給され、以後は通常の偶数月の15日に「支給月の前々月と前月の2カ月分」の支給形式になる

 65歳を迎える誕生月日が10月18日である場合
1. 10月17日が65歳に達した日として年金受給権が発生する
2. 10月が年金受給発生月となるため、11月分のみが支給対象となり12月15日に支給される
3. その次の支給からは2か月後の翌年2月15日となるが、その際は12月分と翌年1月分が支給され、以後は通常の偶数月の15日に「支給月の前々月と前月の2カ月分」の支給形式になる

このように、初回の支給に関しては通常の支給の例外として扱われる形で支給になります。

1日生まれは前月から支給開始する

さらに、1日生まれの人に関しては次のような形で支給が開始されます。

 65歳を迎える誕生月日が9月1日である場合
1. 8月31日が65歳に達した日として年金受給権が発生する
2. 8月が年金受給発生月となるため、8月分および9月分が10月15日に支給される
3. その次の支給からは2か月後の12月15日となるが、その際は10月分11月分が支給され、以後は通常の偶数月の15日に「支給月の前々月と前月の2カ月分」の支給形式になる

 65歳を迎える誕生月日が10月1日である場合
1. 9月30日が65歳に達した日として年金受給権が発生する
2. 9月が年金受給発生月となるため、9月分および10月分が12月15日に支給される
3. その次の支給からは2か月後の12月15日となるが、その際は10月分11月分が支給され、以後は通常の偶数月の15日に「支給月の前々月と前月の2カ月分」の支給形式になる

このように、1日生まれの人の場合は、前月から受給資格月となることによって、若干異なる流れになります。ただし、これは手続き上の誤差とも表現できることであって「貰いそびれる」ということではありません。

なお、1日生まれの人は1か月分の保険料を2日~末日生まれの人と比べて保険料を納める必要も出てきます。

実は、国民年金の保険料はその月分から支払う義務があります。それはたとえ1日だけであっても日割り計算等はされません。例えば、9月1日生まれの人は前月末日である8月31日だけであっても、その月分から保険料を支払わなくてはならないということになります。

以上のような点にも注意しましょう。

年金支給日の振り込みの流れ

年金支給日の振り込みまでの流れを紹介します。

支給日の稼働時間に引き出せる

年金が支給されたら、金融機関およびコンビニのATMから稼働時間に引き出すことができます。引き出せる時間帯については多くの金融機関は午前8時45分からといわれていますが、一律ではないことに注意しましょう。

年金種類ごとに振込先を分けられる


国民年金と厚生年金、それぞれの公的年金は振込先を分けることができます。ただし、老齢基礎年金及び老齢厚生年金のように国民年金を構成するものとして枝分かれはしている年金については、合算された上で支給されるため分けられません。

支給される年金支給月額

実際に支給される金額はどのくらいなのかを紹介します。

全期間納めたら満額支給される

老齢基礎年金は、20歳から60歳の40年間(480か月)の保険料を支払うことで、65歳から「満額支給」の権利を得ることができます。

なお、2017年4月時点での現在の満額の老齢基礎年金は779,300円となっていますが、この金額は定期的に改定されていることに注意しましょう。

全額免除された期間は1/2になる

支払い期間中に免除などを行った場合はその期間中に関してはある程度の減額が発生します。例えば、全額免除の場合は1/2となります。2009年3月分までは1/3だったことを考えると、現時点でかなりの減額になっていることが伺えられます。

未納期間は計算対象期間にならない

また、保険料の未納期間については年金の計算対象期間には含まれません。未納を行うことで、将来支給される年金が免除以上に減額されるということです。

なお、未納をした場合は段階を踏まえて催促状および督促状などが郵送されます。しかし、それらを無視の姿勢を維持させていくと、最終的に「悪質な未納者」と判断されて資産の差し押さえの処分を受ける恐れがあります。よって、未納の放置だけは原則として避けて、毎月の保険料を支払うようにしましょう。

支給条件は120か月以上必要である

「満額の老齢基礎年金の受給」を得るためには、40年(480か月)必要なのは前述の通りですが、老齢基礎年金の受給資格自体は、保険料納付済期間、保険料免除期間の合計が10年以上(120か月以上)の期間で得ることができます。

ただし、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合算期間が10年以上あれば、上記の要件を満たさなくても支給されます。

なお、10年以上という規定になったのは2017年8月1日からです。それ以前は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した資格期間が原則として25年以上必要でした。

また、老齢基礎年金の支給開始年齢は原則として65歳からになりますが、1941年4月2日以降に生まれた受給者であれば、希望によって60歳~65歳になるまでの間でも受給することができます。これを繰り上げ支給といい次の2種類があります。

 全部繰り上げ:全ての年金が対象となる支給
 一部繰り上げ:一部の年金が対象となる支給

ただし、この選択には次の制限か課せられることに注意しましょう。

 国民年金に任意加入中の人は繰上げ請求できない上、繰上げ請求後に任意加入と保険料の追納もできなくなる
 受給権は請求書が受理された日に発生し、年金は受給権が発生した月の翌月分から支給されるが、受給権発生後に繰上げ請求を取り消しと変更ができない
 老齢基礎年金を全部繰上げて請求する場合、特別支給の老齢厚生(退職共済)年金のうち基礎年金相当額の支給が停止されるが、報酬比例部分は支給される
 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、事後重症などによる障害基礎年金を請求ができなくなる
 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、寡婦年金は支給されない
 すでに寡婦年金を受給されている人についても寡婦年金の権利がなくなる
 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、65歳になるまで遺族厚生年金と遺族共済年金が受給できなくなる
 老齢基礎年金を全部繰上げて請求すると、次の減額率の計算に当てはめて生涯減額されるため、受給期間の長短により、繰上げ請求しない場合よりも受給総額が減少する場合がある(これは一部繰上げの場合の場合でも同様である)
減額率 = 0.5% × 繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数
 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、国民年金保険料の後納制度による保険料納付はできない
 後納期間は「2015年10月1日から2018年9月30日まで」となっている
 特例老齢農林年金の受給権発生に伴い、過去に農林共済組合から支給を受けた退職一時金の返還義務が発生した年金受給権者が、特例老齢農林年金の受給権発生前に老齢基礎年金を繰上げ請求した場合、追加されたみなし厚生年金期間は、繰上げした老齢基礎年金の額の算定の基礎とならない

また、一部繰り上げの場合にはさらに次の制限も課せられます。

 老齢基礎年金の一部繰上げの請求は、特別支給の老齢厚生(退職共済)年金の定額部分の支給開始前でなければ行えない
 老齢基礎年金を繰上げて請求した後、障害者の特例措置及び長期加入者の特例措置を受けられない
 老齢基礎年金を一部繰上げて請求した後、厚生年金保険に加入した場合、報酬比例部分及び繰上げ調整額は、在職支給停止の対象となる

このように、繰り上げ支給にはさまざまな制限が課せられるため、慎重な判断が求められます。

また、老齢基礎年金の繰り上げとは逆に老齢基礎年金の繰り下げ支給もあります。これは、原則として65歳に達した時点でも年金受給を受けないと申し出た場合、次の計算式で年金額が増額されるというものです。

 65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数 × 0.7%

ただし、繰り下げ支給には、他の年金の権利(受給資格)が発生するまでの間など一定の制限があることに注意しましょう。もし、発生した場合はすみやかに請求手続きを行うことになります。

以上のような点にも考慮して、受給要件を満たしていること、仮に繰り上げまたは繰り下げ支給の決断をするかどうかの判断をすることが重要です。

亡くなったときの年金支給日

年金受給者が亡くなった場合の年金支給日について紹介します。

亡くなった月分までの年金が支給される

まず、年金受給者が亡くなった場合は「年金を受けていた人が亡くなった当時、その人と生計を同じくしていた遺族(後述参照)」が代わりに受給することができます。

ただし、受給の際には、年金受給権者死亡届(報告書)と呼ばれる所定の書類を最寄りの年金事務所または年金相談センターまで提出する必要となります。提出が遅れた場合は、多く受給してその後に返納の請求がされる場合があるため、亡くなった事実が発生したら早急に提出しましょう。

また、亡くなった人と受給の請求をする人が同一世帯でない場合は「生計同一についての別紙の様式」と呼ばれる書類も添付させる必要があります。

以上のことから、今回の支給が発生を想定して事前に年金事務所またはねんきんダイヤルなどに相談をしておくことをおすすめします。

なお、亡くなった月分までの年金については「未支給年金」と呼ばれもします。

生計を同じくした遺族が受け取れる

ただし、生計を同じくしていた遺族が未支給年金の受給できるものの、それにも次の通り優先順位が決められています。

1位:配偶者
2位:子
3位:父母
4位:孫
5位:祖父母
6位:兄弟姉妹
7位:その他1~6以外の3親等内の親族

年金も遺産として扱われる以上、相続に該当するとして「配偶者が最優先の受給者であり、それに続いて子、父母といった形で続くこと」が伺えられます。

将来支給される年金を意識して納付を忘れずに

年金の支給日に関して紹介しました。定期的に郵送される年金定期便などから、各々の年金保険料の支払い状況が把握できるため、どのタイミングから年金が受給できるようになるのか把握することが可能です。よって、主に老後の生活の糧になる年金の受給状況を事前に把握することで生活設計や保険の加入などの資産運用の構築なども自助努力で可能となります。これらを意識している人たちは、年金の受給日をよく確認して今後の動きを決めていくことで、より豊かな生活基盤を作っていくことができるでしょう。