介護を行う際に不可欠なものの一つといえば介護用品が挙げられます。ただし、介護用品の場面に応じた使い分けをしなければ、利用者と介護者それぞれが満足する結果を作ることが困難となります。そのため、今回は介護者別に応じた介護用品について紹介します。
目次
補助があれば自立できる人向けの介護用品
比較的軽度の要介護認定を受けた利用者は、原則として補助があれば自立した生活を送ることができます。それを想定した介護用品としては次のものが挙げられます。
簡易設置できる手すりで歩行補助
手すりは、利用者を移動させる介護用品で次の特徴を備えています。
● 自宅の廊下や階段などを歩行することで、利用者の移動に加えて運動能力を維持させる役割も果たしている
● 壁に取り付けるだけなので比較的簡易に設置することができる
● 介護保険制度上では、要介護の認定を受けているなど一定の要件を満たすことで、上限20万まで設置費用が支給される(1割の自己負担額が発生する)が、分割で利用することが可能である
● 縦型、L字型、波字型といったタイプがある
自立をサポートする歩行器
歩行器は、手すり同様に利用者を移動させる介護用品で次の特徴を備えています。
● 歩行器を通して筋肉維持に繋げられる
● 杖と異なりバランスが取れるため安定して歩行できるが、利用方法を誤ると転倒する恐れもあるため注意する
● 四脚、固定型、交互型、前輪型といったタイプがある
● 歩行器を選ぶ際は、利用場所、安定性、利用者の現況などを考慮する
スロープを設置し転倒防止
スロープは、段差解消に用いられる介護用品で次の特徴を備えています。
● トイレや浴室、玄関など段差が起きやすい箇所に取り付けることが多い
● スロープを取り付けることで車椅子での移動も可能となる
● 設置するものから折りたたんで携帯できるものまで用途に応じてさまざまなタイプがある
● 手すりと同様に、介護保険制度に基づいて上限20万まで設置費用が支給される(1割の自己負担額が発生する)
ベッドで過ごす時間が多い人向けの介護用品
ベッドで終日過ごすことが多い寝たきりの利用者に対しては、次の介護用品が役立ちます。
楽に起き上がれる介護用ベッド
介護油ベッドは、起き上がりや立ち上がりを容易に行える機能を備えた介護用品で次の特徴を備えています。
● 「特殊寝台」とも呼ばれている
● 利用者にとっては食事や車椅子などに移動させる際の動作の負担が軽減できる
● ボタン一つでベッドの高さ調整などもできる
● 介護保険制度上では、「レンタル」の場合のみ対象となっており、かかった費用のうちの1割が自己負担額となる
● 介護用ベッドを購入する場合は全額自己負担となる
● ベッドの大きさも利用者の身長を想定していくつかのタイプがある
外出をサポートする車椅子
車椅子は、歩行困難な利用者を移動させる介護用品で次の特徴を備えています。
● 介護保険制度上では、「レンタル」の場合のみ対象となっており、かかった費用のうちの1割が自己負担額となる
● 身体障害者福祉法上に基づく身体障害者手帳がある場合は、自治体によっては購入する際の補助金が発生する場合がある
● 自走型、介助用、電動といったタイプがある
● 福祉用具の専門店のみならずホームセンターなどでも販売されている
緊急の為の呼び出しブザー
呼び出しブザーは、緊急を要する事態になった時に呼び出すことができる介護用品で次の特徴を備えています。
● 病院にあるナースコール同様に離れた場所からでも呼び出すことができる
● 介護保険制度上では適用の対象外となっており購入する際は全額自己負担となる
● 市販のものもかなり流通しており、数千円~数万円と幅広く販売されている
床ずれ防止用のマットレス
マットレスは、ベッドの下に敷いて腰や肩にかかる負担を軽減する介護用品で次の特徴を備えています。
● 「特殊寝台付属品」として扱われる
● 体に合わないマットレスを使うと利用者の疲労が蓄積される恐れがある
● ベッドの大きさ(シングル、セミダブルなど)に合わせたタイプが販売されている
● 介護保険制度上では、「レンタル」のみ対象となっており、かかった費用のうちの1割が自己負担額となる
体の状態に合わせた車椅子の選び方
前述でも登場した車椅子は、現状の体の状態に合わせて次のポイントを考慮して選ぶことが求められます。
ハンドリム付きは体力がある人向け
比較的体力がある利用者には、「ハンドリム(大車輪の外側に固定されている小型の車輪)」が付いている車椅子がおすすめです。
これには、次の特徴が備わっています。
● 「自走型車椅子」を指す
● 金属製とプラスチック製がある
● ハンドリムを前に回すと前進、逆に後ろに回すと後退する
● 片方だけを回すと旋回する
● 腕を使うため腕の筋トレ効果が期待できる
自力でこぐのが難しい場合は電動タイプ
自力で自走をするのが難しい利用者には、電動タイプの車椅子がおすすめです。
● 見た目はスクーターのような形状である
● 平坦な道はもとより坂道などでも楽に移動できる
● バッテリーが搭載されており、そこから発せられる電気によってモーターが駆動されて移動する
● 道路交通法上では、「歩行者」の扱いとなるため免許などは不要である
持ち運ぶ機会が多い場合は折りたためるタイプ
持ち運ぶ機会が多い利用者には、折りたためるタイプの車椅子がおすすめです。
● 軽いモノでも数㎏の重さがあるため持ち運びには注意する
● 持ち運びに便利な分、座り心地はあまり良くない場合が多いため長時間の利用には適していない
● デザインは、極力無駄を省いている分地味な印象を与えるものが多い
● 利用者のみならずスポーツ大会などでも救急支援者が発生した場合に、移動をさせるなど多くの場面で利用されている
● 数十万程度の価格がつく電動型と比べると、1万円弱と比較的安価で販売されているため購入されることも多い
体の状態に合わせた介護用ベッドの選び方
身体の状態に合わせて、次のポイントを考慮して介護用ベッドを選ぶことが求められます。
身長に合わせてサイズを選ぶ
介護用ベッドは、次のサイズに分けられます。
ミニサイズ
・ 利用者の身長が150センチ未満に利用される
・ スペースをもっとも取らないタイプのため、狭い部屋にも設置できる
・ 介護者なども利用者に接近しやすい
レギュラーサイズ
・ 利用者の身長が150センチ以上175センチ以下に利用される
・ もっとも一般的な大きさである
ロングサイズ
・ 利用者の身長が176センチ以上に利用される
・ 大きいため狭い部屋には適さないことがある
これらの中から、利用者にマッチングしたものを選びましょう。
ただし、他にも次のことに対しても考慮することをおすすめします。
● ベッドを設置する際はある程度壁から離しておく
● ベッドの長さと同様にベッドの幅にもいくつかのタイプがあるため、利用者の寝返り具合と介護者の介護のしやすさをも考慮する
ベッドで食事をするならテーブル付き
介護用ベッドに合わせたテーブルについても重要なポイントといえます。
● 「特殊寝台付属品」として扱われる
● キャスターが付いているのが一般的なため移動させるのが容易である
● 柵の上に渡して使用するタイプと、ベッドの横から差し込むタイプに分けられる
特に寝たきりの利用者の場合、テーブルは食事のみならず手芸や折り紙などの手作業を行う際にも利用することがあるため、少しでも使い心地が良いものを選ぶことが重要です。また、機能面だけでなく利用者のお好みのカラーを選んであげるといったデザイン面に対する配慮も忘れないようにしましょう。
シーンに合わせたアイテムの選び方
次のシーンに想定した介護用品の選び方を紹介します。
お風呂に安全に入るために必要なもの
お風呂に入る際に役立つ介護用品は、利用者と介護者のそれぞれの負担が軽減されるメリットがあります。そのため、うまく利用することが重要です。
なお、お風呂に関する介護用品には次のものが挙げられます。
● 椅子(シャワーチェアなど)
● 浴槽用手すり
● 入浴台(バスボード)
● すのこ
● 滑り止めマット
● 入浴用介助ベルト
● 入浴用リフト
● 簡易浴槽(ポータブル浴槽)
そして、これらを利用する場合は次のポイントに考慮しましょう。
● 浴室および浴槽の寸法が利用者と合うかどうかを事前に確認する
● 利用者の現状の要介護認定
多数の介護用品はあるものの、これらを把握しておくことでより効果の高い利用が見込めます。
排泄に役立つもの
排泄は、利用者にとって自尊心を傷つけかねないデリケートなもののため、それに対して少しでも寄り添う姿勢が求められます。しかし、自力で行うにはやはり限界があります。そのため、排泄時に役立つ次の介護用品について押さえておく必要があります。
● おむつ
● ポータブルトイレ
● 便器(洋式など)
これらは、利用者が自力で排泄できるのかどうかによって異なってきます。
例えば、自力でもトイレまで行けるくらいであれば、トイレまで寄り添って案内するくらいでも十分ですが、その際も洋式の方が和式と比べると腰への負担がかからないため有効です。
また、逆にトイレまで移動が行けるほどではないといった場合は、部屋に設置できるポータ
ブルトイレの出番となります。さらに、移動すらもままならない状態であればおむつで対応するといった対応が求められます。この際も、素材が紙または布どちらがよいかなどは考慮しましょう。
このように、利用者の現状を踏まえて排泄に役立つ介護用品の使い分けをしていきましょう。
家の中の生活を見守る便利なもの
利用者の身体のみならず精神的に安心も提供する必要があります。それを担うサービスとしては、24時間365日体制で、セキュリティ関係業者や郵便局員、電気などのライフライン事業者などが実施している「見守りサービス」などが挙げられます。
そして、この環境を作るために「センサー」が用いられており、次のような特徴を備えています。
● センサーの感知があった時は家族などにPCやスマートフォンなどに連絡が入り、駆けつけることができる
● センサーの反応がなかった時でも、緊急を要する事態が起きたと判断して駆けつけることができる
● 単に緊急事態の駆けつけだけでなく、犯罪防止や情報提供などの効果も期待できる
なお、見守りサービスには他にも次のようなサービスも挙げられます。
● 定期的に利用者の自宅を訪問する
● 定期的に電話あるいは利用者へメールを配信して安否を確認する
● カメラなどで見守る
● 食事の宅配業者が配達時に訪問した際に安否も同時に確認する
このように、多種多様なサービスの実施もあって利用者は増加し続けています。
ただし、見守りサービスは介護保険の適用の対象外となるため、全額自己負担となります。そのため、ある程度の経済的な余裕が前提となることに注意しましょう。
おすすめの介護用品レンタルサイト
実際に介護用品のレンタルを行っているサイトで、おすすめのサイトを2つ紹介します。
ヤマシタコーポレーション
介護用品のレンタルおよび販売を行っているヤマシタコーポレーションのサイトには、次の特徴があります。
● トップ画面で商品検索ができるため目的の商品を見つけやすい
● 商品検索だけでなく、目的と利用者の状態に合わせた商品のカテゴリ分けを行っている
● 全ての商品に画像、商品の説明文、性能、介護保険を利用した場合の料金表示が掲載している
● 一部の地域を除いて全国各地に拠点を構えて24時間365日の対応を行っている
● 具体的な利用方法のステップ、Q&Aなども掲載されておりスムーズに利用ができるような体制作りがされている
ダスキンヘルスレント
介護用品のレンタルおよび販売を行っているダスキンヘルスレントのサイトには、次の特徴があります。
● トップ画面でレンタルまたは購入する商品のカテゴリ分けがされており目的の商品を見つけやすい
● 全ての商品に画像、商品の説明文、性能、介護保険を利用した場合の料金表示が掲載している
● 山梨県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県以外の全ての都道府県で店舗展開されている
● 同社のレンタル商品は約3,100にも及ぶ
● 会員登録を行うことでメルマガ購読できる
● 介護に関するコラムとして、「介護のお役立ち情報」が連載中である
正しく介護用品を選び無理のない介護生活を
介護用品に関して紹介しましたが、いずれも利用者の現状と照らし合わせて利用することが前提となっています。それは利用者に対して無理をさせず安心して介護を送ってほしいという考えがあるからです。そのため、介護者は利用者の現状を踏まえて介護用品そしてそれに関連したサービス内容を理解することが求められます。