多くの方の老後の経済的基盤となるのが老齢年金。老齢年金は日本の公的年金で、年金に加入し保険料を支払っていた方が、定められた年齢に達すると支給されることになっています。老後の生活には切っても切れない年金ですが、老齢年金は支給開始年齢に達すると自動的に支給されるのではなく、請求することで受給できる年金です。今回は、老齢年金の種類や支給年齢、支給額など詳しく探ってみます。
目次
老齢年金の種類
一口に老齢年金と言っても、老齢基礎年金と老齢厚生年金、退職共済年金の3種類があります。一つは老齢基礎年金で、国民年金に加入して支給要件を満たした方が所定の年齢に達した時に支払われる年金です。もう一つは老齢厚生年金で、厚生年金の加入期間があって老齢基礎年金の受給資格を得ている方が老齢基礎年金にプラスして支給されます。また、退職共済年金は老齢厚生年金とは優遇制度などの面で違いがあるものの、老齢厚生年金に一元化されています。それぞれの老齢年金について紹介します。
老齢基礎年金の説明
日本の公的年金の一つである国民年金に加入し保険料を納めながら、受給期間を満たした方に所定の年齢に達した時点で支払われるのが老齢基礎年金です。老齢基礎年金の受給資格期間は、以前は25年必要でしたが現在では保険料の納付期間と免除期間を合わせて、10ヶ月(120月)以上であることが受給資格期間に改正されています。老齢基礎年金は、20~60歳まで40年間納めると満額が支給され、支給開始年齢は65歳からとなっていますが、希望した場合は60歳から受給できる繰り上げ受給や70歳まで受給開始年齢を伸ばせる繰り下げ受給もできるようになっています。
老齢厚生年金の説明
もう一つの公的年金であるのが老齢厚生年金です。老齢厚生年金は、主に民間企業に勤務しているサラリーマンなどが加入する厚生年金から支払われる老齢年金で、自営業者の場合は老齢基礎年金だけの受給になりますが、そこに老齢厚生年金がプラスされますので年金額が充実します。老齢厚生年金は、厚生年金の加入期間があり老齢基礎年金の受給資格を満たした方が、所定の年齢に達した時に老齢基礎年金に上乗せされて支給される年金で、基本的には老齢基礎年金と同じく65歳からの支給ですが、一定の要件を満たしている場合は、60~64歳までの間から老齢厚生年金の特別支給があります。受給要件は、老齢基礎年金の受給要件を満たし且つ厚生年金の被保険者期間が1ヶ月以上あることとされています。
退職共済年金
退職共済年金とは、公務員などを対象とした老齢年金のことを指します。サラリーマンは、老齢基礎年金に老齢厚生年金を上乗せされますが、公務員などの場合は老齢基礎年金に退職共済年金が上乗せされることになります。退職共済年金の仕組みは、老齢厚生年金とほぼ同じですが、職域の年金部分が更に上乗せされることをはじめ、平均標準報酬月額の算出が優遇されている、退職後に民間企業に再就職した際の年金カット率が優遇されているなどに違いがあります。また、特例として60歳から特別支給の退職共済年金が受給できるようになっており、退職共済年金の受給資格は、65歳以上で加入期間が以前は25年以上でしたが、現在では加入期間が10年以上に短縮され、厚生年金と一元化されています。
老齢年金の支給開始時期
老齢年金は、基本的に65歳以上が支給開始年齢ですが、老齢基礎年金では希望した場合は60歳からでも受給できる仕組みになっています。また、老齢厚生年金や退職共済年金も一定の要件を満たしていた場合には、60歳から特別支給の年金が受給できるようになっているなど、基本的には65歳が支給開始年齢となっては入るものの、65歳以前に年金を受給することもできるようになっています。
支給開始年齢は、自分で選べるようになっていますが、それぞれにメリット・デメリットがあり、健康状態の面などもありますので慎重に選択することが必要です。
繰り上げ請求もできる
基本的に老齢年金は、老齢基礎年金の加入期間を満たし65歳以上が支給開始年齢となっていますが、希望すれば60歳からの繰り上げ請求もできるようになっています。繰り上げ請求では、請求月の翌月から支給が開始されますが、基本的には65歳からの支給ですので年金額に一定の減額率を掛けて減額されることになります。また、繰り上げ請求した場合には、早期に年金が受け取れ経済的に余裕が生まれる反面、障害基礎年金が支給されなくなることの他、寡婦年金が支給されないなどのデメリットもありますので、請求する場合には十分に検討する必要があるでしょう。
基本は65歳から支給開始
現在の老齢年金は、基本的には65歳から支給開始となっていますが、繰り上げ請求の他繰り下げ請求も可能となっています。繰り上げ請求は、年金額に一定の減額率を掛けて減額されますが、繰り下げ請求では一定の増額率を掛けて年金が増額されます。年金額は65歳を100%として計算され、減額率や増額率は生年月日によって違いがあることに加え様々な要件がありますので、年金の請求をする場合には、詳細をしっかりと確認しておくことが重要です。健康に自信がある方なら、支給開始年齢を70歳まで伸ばすことも可能です。
老齢年金の計算方法
老齢年金は、国民年金の加入状況を基本に計算され、各年金とも国民年金の受給資格をクリアしていることが条件です。国民年金の場合は、納付期間と納付を免除された期間を合わせて計算され、保険料の未納期間は老齢基礎年金の計算時に反映されません。また、退職共済年金は老齢厚生年金より優遇されている部分はあるものの、老齢厚生年金の仕組みとほぼ同一の仕組みとなっており、計算方法は年金によって違いがあります。
平均標準報酬月額×給付乗率
遺族厚生年金の比例報酬部分の年金額は平均標準報酬月額に給付乗率を掛け、そこに平成15年3月までの被保険者期間の月数を掛けて計算するのが基本となっています。平均標準報酬月額とは、平成15年3月までの被保険者期間の計算をする上で基礎となるそれぞれの月の標準報酬月額の総額を平成15年3月までの被保険者期間の月で除した額になりますが、計算方法は複雑でその年によって年金額が変わることが少なくありません。
平均標準報酬月額×給付乗率
もう一つ計算の基礎となるのがH.15年4月からの被保険者期間月数です。計算に使われる標準報酬月額とは、平成15年4月以後の被保険者期間の計算の基礎となるもので、それぞれの月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を平成15年4月以後の被保険者期間で除した額、すなわち賞与を含めた平均額のことを指します。本来の水準で計算した額と平成6年の水準で計算した額とを比べて本来の水準額が従前額より下回った場合は、従前額が報酬比例部分の年金額になります。また、従前額を計算する際の給付乗率は生年月日によって異なっています。
老齢遺族年金を受給できる要件
公的年金加入者が亡くなった際には、残された遺族は遺族年金が受給できます。遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、遺族共済年金は遺族共済年金に一元化されています。それぞれに受給要件があり、亡くなった方や遺族の要件なども定められていますので、それらの要件のいずれかを満たしていることが必要となります。何といっても要件の要となるのは、保険料を定められた期間納付していることです。
老齢厚生年金の額
老齢厚生年金の額は、給料の額と加入月数で計算されます。老齢厚生年金は65歳から受給できるようになっていますが、昭和36年4月2日以後に生まれた男性、昭和41年に生まれた女性は厚生年金に1年以上加入していることを要件に60歳から老齢年金の定額部分と報酬比例部分が受給できるようになっており、支給額の計算は、生年月日によって違いがあります。その後、65歳になった時点で報酬比例部分に従来の老齢基礎年金をプラスした額になります。しかし、老齢基礎年金だけを見た場合、それまでの定額部分よりも低くなるのが多く、その差額として経過的加算が支給されることになっています。老齢厚生年金の額は給料の額がポイントとなると言えます。
遺族厚生年金の額
厚生年金加入者が亡くなった場合に、残された家族に支給されるのが遺族厚生年金です。遺族厚生年金は、遺族基礎年金と同様に一律で金額が決まっているわけではなく、亡くなった厚生年金加入者の平均標準報酬月額に加え、配偶者や子供の人数など状況によって違いがあります。また、国民年金にも遺族基礎年金があり、年金は2階建てとなっていますので遺族厚生年金に遺族基礎年金をプラスした額が支給額となります。更に、遺族厚生年金には中高齢の加算があり、これは厚生年金加入者が亡くなった時点で40歳以上65歳未満の亡くなった方と同一生計で子供がいない妻に支給される制度です。
老齢厚生年金の半分+遺族厚生年金の3分の2
65歳以上の遺族厚生年金の受給権者が自分の老齢厚生年金の受給権がある場合は、以前はどちらかを選択できることになっていましたが、法改正により老齢厚生年金は全額支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する部分が支給停止となっています。それにより、遺族厚生年金は3種類の受け取り方の中から選択することとなりましたが、老齢厚生年金の2分の1に遺族厚生年金の3分の2を加え、更に老齢基礎年金をプラスした額を選べるのは、遺族厚生年金の受給権者が配偶者であった場合に限られています。
老齢基礎年金の受給手続きの方法について学ぼう
老齢年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金、退職共済年金の3種類がありますが、支給開始は基本的に65歳からとなっています。支給額は報酬や加入月数によって異なり、生年月日によっては特例を受けられる場合もありますので、老齢基礎年金の受給手続きの方法について、詳細を確認することは重要です。年金は、老後生活にとっては大切な収入ですし、裁定請求を行わなくては受給できませんので、受給権が発生した場合は忘れずに請求しましょう。