年金手帳とは、国民年金や厚生年金に加入していることを示す手帳のことです。日本の場合、20歳を迎えた成人男女は必ず国民年金に加入することになりますが、その際に本手帳が交付されることになります。しかし、実際これがどんな場面で役立つのかなどは、あまり詳しくは知らない人も多いかもしれません。今回は、成人した男女に交付される年金手帳について紹介します。

目次

年金手帳を無くしてしまったら


年金手帳を無くしてしまった場合、次のような対応をすることになります。

再発行するべき?

もともと、預金通帳やキャッシュカード、クレジットカードなどと比較すると、年金手帳を使う機会はこれらの時がほとんどでしょう。ただし、そのため、あまり普段から手元に置くことが少ないため、どこに管理をしたのか忘れたりすることが珍しくもありません。

しかし、特に就職や転職した時は厚生年金加入時に絶対に必要になるので、もし無くしてしまった場合は非常に面倒な事態になるでしょう。そのため、家をくまなく探すまたは再発行の手続きを行うかの選択を取ることになります。

以上のことから、どうしても見つからず無くしてしまったと判断できた場合は、早急に再発行の手続きに入ることをおすすめします。

なお、「年金手帳が手元にないケース」としては次のことが多いです。

● 実家または別居先に置きっぱなしになっている

● 親が管理している(本人が20歳になっても学生であれば親が管理していることが多い)

● どこかのケースにしまったままかになっている

● 本当にどこにしまったのかが分からなくなっている

どこで再発行できるのか


再発行を決断したもののどこでその手続きを取るかについてですが、主に市役所または年金事務所で行うことができます。ただし、細かい区別があるので自分がどの立場の被保険者かを確認しておきましょう。

● 国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者
住所地の市区町村役場(主に国民年金担当窓口)

● 厚生年金保険または船員保険の被保険者
勤務先を経由または直接、勤務先の所在地を管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センターでも対応可)

● 国民年金第3号被保険者
配偶者の勤務する事業所の所在地を管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センターでも対応可)

● 厚生年金保険の第4種被保険者
住所地を管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センターでも対応可)

● 最後に加入した年金制度が国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者
被保険者であった最後の住所地を管轄する年金事務所

● 最後に加入した年金制度が厚生年金保険または船員保険
被保険者であった最後の事業所の所在地を管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センターでも対応可)

● 最後に加入の年金制度が国民年金であった第3号被保険者
被保険者であった最後の住所地を管轄する年金事務所(郵送の場合は事務センターでも対応可)

再発行の手続きの方法


再発行の手続きには次の方法があります。

● 電子申請
 パソコン上から行う方法
 ブラウザソフトおよびパソコン自体の動作を始め、次の環境が揃っていることが必要であるため、まだまだ利用頻度としては他の方法と比べたら低い
・ ポップアップブロックの解除
・ Javaがインストールされている
・ 電子証明書の取得
・ e-Gov電子申請システムサイトの信頼サイトへの登録
・ e-Gov電子申請プログラムのインストール

● 郵送
 年金事務所に所定の書類を郵送して申請する方法
 年金手帳の再発行手続き自体は無料であるが、切手代や封筒代は自己負担である
 書類に不備があった場合などは再度申請することになる可能性があることを考慮すると、なるべく窓口に訪問した方が良い場合がある

● 窓口対応
 市区町村役場や年金事務所などの窓口で直接申請する方法
 直接訪問する必要があるため一定の時間が必要だが、担当者と相談しながら再発行の手続きを進めることができる

これらの方法から、被保険者それぞれの環境を考慮して、もっとも取りやすい方法で再発行の手続きを進めていきましょう。なお、この手続きに入る段階ですが、年金手帳を無くしたまたはき損したと判断できた段階で大丈夫です。

再発行の手続きに必要なもの

再発行の手続きを取る際は、次の書類を準備しましょう。

● 年金手帳再交付申請書
 主な記入事項
・ 基礎年金番号
・ 生年月日
・ 氏名(フリガナ)
・ 性別
・ 住所(フリガナ)
・ 所在地
・ 加入している制度の名称(国民年金、厚生年金、船員保険、共済組合)
・ 取得年月日
・ 喪失年月日
 日本年金機構のホームページからでもPDF形式でダウンロードして入手できる

● 年金手帳
 き損した場合のみに必要となる
 無くしてしまった場合は当然再発行の手続き上では使用できない

手続き費用はかからない

通常、カードなどは無くしてしまったことで再発行をする場合は、原則として発行手数料が発生します。例えば、クレジットカードの再発行の場合は会社ごとにもよりますがおおむね1,080円(税込)です。

しかし、年金手帳の場合は再発行時に費用は発生しません。もし発生したとしても、せいぜい切手代(郵送での手続きの場合)、あとは交通費(市役所、年金事務所、郵便局など)くらいでしょう。

ただし、今後の生活の収入源になる年金受給の役割を果たす年金手帳は、そもそも無くさないようにしっかり管理していくことが大切です。

新しい年金手帳が届くまでの期間

再発行の手続きを無事に取って、あとは後日再発行されるのを待つだけになります。

しかし、その具体的な期間は被保険者の区分によって次の通り定められています。

● 第1号被保険者
数週間~約1か月

● 第2号被保険者
約1か月

● 第3号被保険者
約1か月

● 厚生年金の第4種被保険者
即日(ただし郵送の場合は約1週間程度)

再発行の手続き後、これらの期間内に即日発行を除いて、原則として日本年金機構で管理している住所先に郵送されます。また、事業所経由での再交付申請の場合は、事業所に送付されます。

できるだけ早く再発行したいとき

年金手帳の再発行は、一定の時間がかかりますがどうしても急ぎで即時発行を求める場合も想定できます。

その場合は、年金事務所の窓口に、通常の再発行時にも使用する年金手帳再交付申請書を持参した上、次の条件を満たすことで可能になります。

● 緊急性の高いものであること

● 本人または次の代理人が対応すること
 社会保険労務士、社会保険労務士の代理人
 法定代理人
 事業主、事業主の代理人となる事務員(事業主を通じて申請書を提出されたもの)

なお、申請者が本人の場合は、本人であることが確認できる運転免許証などの身分証明等の持参、法定代理人の場合は、法定代理人であることがわかる書類の持参を持参する必要があります。

気になる再発行にかかる時間もおおよそ数十分程度と手早いため、覚えておくと便利なことといえます。

ただし、手続きの依頼をした代理人が上記に挙げた人以外、例えば配偶者といった家族であれば、委任状があっても即時発行ができないことに注意しましょう。

年金手帳は公的年金制度に加入すると交付される

ここまで、年金手帳の再発行に関する紹介をしてきました。それを通して、本手帳が20歳になった男女が公的年金制度に加入することになった際に発行されるものということがお分かりいただけたと思います。

そして、より本手帳の重要性を理解してもらうためにも、その具体的な役割を次の項目に沿って紹介します。

交付される時期

年金手帳は、「20歳となった時」に市区町村役場で国民年金の加入手続きを行うことで発行されます。発行元は、日本年金機構になります。

なお、これは本人自らが行うことになりますが、次のような理由で、「誕生日を迎えてから14日以内」で加入手続きを取ることが望ましいとされています。

● 先に保険料納付する、「前納」ができる時期が少なくなったりすること

● 納付に関する条件を満たしていない恐れがあること

ただし、第1号被保険者と第3号被保険者に該当する人に関しては、住民基本台帳がある現在では、そこに記載されている個人情報に基づいて加入手続きが行われるようになっています。そのため、原則として加入手続きを忘れても発行される仕組みとはなっています。

また、高校を卒業する18歳で就職をした場合は、事業者経由で20歳を迎えた時に発行されます。そして、この時に加入する年金は厚生年金となります。

年金手帳の役割

年金手帳の役割は次の通りです。

● 「公的年金制度に正式に加入していること」と証明するもの

● 納付記録を記載するもの

● 青色、オレンジ色と表紙による色分けがなされている

そして、本手帳には、加入者ごとに割り振られている基礎年金番号が記載されており、これに基づいて、毎月発生する年金保険料の納付および主に老後を迎える時期(65歳以上)に年金を受給することになります。

なお、あまり知られていないことといえるかもしれませんが、身分証明書としても活用することが可能です。また、本手帳の提示で一定の割引が効く施設もあり、その用途の範囲は意外と広いです。

青色の手帳の意味

青色の表紙の年金手帳は、平成9年1月以降に被保険者資格の加入手続きを行った人に対して発行されています。現在の基礎年金番号は平成9年1月に導入されていますが、それに基づいてこの色が使用されています。

余談ですが、平成9年1月~平成21年12月までに発行されたものについては、発行者は日本年金機構の前身である、「社会保険庁(同庁は平成21年12月末で廃止されて平成22年1月より日本年金機構としてスタート)」となっていることが確認できています。

オレンジ色の手帳の意味


オレンジ色の表紙の年金手帳は、昭和49年11月~平成8年12月の間に被保険者資格の加入手続きを行った人に対して発行されました。このため、現在は発行されていない色の手帳となっています。

年金管理に必要な基礎年金番号

年金手帳でもっとも大事になってくるのが、「基礎年金番号」です。

本番号の主な特徴は次の通りです。

● 加入者の年金加入記録を管理している番号である

● 日本年金機構では、原則として1人の加入者ごとに本番号を割り振っている

● 本番号は一生有効であるため、転職して会社変わった、自営業などを始めたなどでも新たに割り振りは不要でそのまま利用することができる

● 特に、共済年金の加入者である公務員や私学教職員は、年金手帳が原則として発行されない代わりに本番号を記した、「基礎年金番号通知書」が発行されている

ただし、緊急を要する事件が発生した際は本番号をセキュリティ保護の観点から変更をする場合があります。その代表的な事例としては、平成27年5月ごろに発生した日本年金機構への不正アクセスによって個人情報が流出した事件が挙げられます。この際は、被害者に対して本番号を変更したお知らせを発した自治体が確認できるなど相応の混乱がありました。

年金手帳が必要な時

年金手帳の役割が大きいことが分かりましたが、その役割を発揮する場面としては次のことが主に挙げられます。

就職して厚生年金に加入するとき

就職した時には、法人化されている会社であれば強制的に厚生年金加入事業者となっているため、厚生年金に加入して第2号被保険者となります。そのため、その加入手続きの際に基礎年金番号が記載されている年金手帳が必要になります。

転職して年金基礎番号の確認がいるとき

基礎年金番号は、前述の通り一生有効ですが、転職した時にそれを転職先から確認されます。それに基づいて前職の厚生年金の加入を引き続き行うことになります。そのため、その加入手続きの際に基礎年金番号が記載されている年金手帳が必要になります。

退職して国民年金に加入するとき

会社を退職した時、今まで加入していた厚生年金から抜けて第2号被保険者としての資格も失うことになります。そのため、第1号被保険者として国民年金に加入をすることになります。そのため、その加入手続きの際に基礎年金番号が記載されている年金手帳が必要になります。

年金を受給するとき

会社員、公務員あるいは自営業者などの生活の中で保険料納付をしてきて、いよいよ受給できる年齢になった時に、年金事務所で受給手続きに入りますが、その際に、基礎年金番号が記載されている年金手帳が必要になります。

なお、今後年金受給者となった場合、年金証書が手もとに届きます。これ以降は、年金手帳を仮に無くしてしまった場合でも再発行は不要となります。よって、年金手帳は基礎年金番号と納付記録を残したもの、年金証書は年金受給の資格があることを証明するもの、こういった認識でも問題ありません。

一般的な年金の種類

公的年金の保険料納付および受給と大切な役割を担う年金手帳ですが、その年金には次のような種類があります。

国民の義務である国民年金

国民年金は国民の義務ともいえる年金です。

この年金の具体的な概要は次の通りです。

● 公的年金の一つで、階段状で表せられる年金支給構造のうち1階部分に該当して、公的年金でもっとも重要かつ基礎となる年金である

● 給付内容は、加入者の状況によって、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金などに分けられる

● 加入者は、20歳以上60歳未満の人であるが国籍に関係なく加入しなければならない

● 加入する場合は、20歳の誕生日を迎えたときからなるべく早い段階(14日以内)で、市区町村役場または年金事務所に所定の書類を準備して加入手続きに行く

● 加入手続き後、年金手帳が発行されて手元に郵送される

● 被保険者の区分は次の通りである
● 第1号被保険者:20歳以上60歳未満の人で第2号被保険者、第3号被保険者に該当しない人(自営業者、無職など)
● 第2号被保険者:会社員、公務員など
● 第3号被保険者:20歳以上60歳未満の第2号被保険者の配偶者

● 平成29年度の月額保険料は16,490円であるが、第1号被保険者はこれを毎月納付しなければならない

● 所得が少ないといった収入状況が厳しいため保険料納付が困難な時は、一定期間免除または猶予される制度がある

● 60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たせなかった、または40年の納付済期間がない、といった理由で老齢基礎年金が満額受給できない時は、一定の要件を満たすことで60歳以降でも加入することができる任意加入制度がある

● 国民年金の納付方法は、国民年金保険料納付書を利用することになるが、それは金融機関、コンビニエンスストアでも利用できる上、口座振替とクレジットも対応できる

会社員が加入している厚生年金

一般的に会社員が加入している年金といえば厚生年金です。

この年金の具体的な概要は次の通りです。

● 公的年金の一つで、階段状で表せられる年金支給構造のうち2階部分に該当して、国民年金の上乗せの役割を果たしている年金である

● 事業所単位で適用されるため、法人化されている会社(農林漁業、サービス業などを除いた5人以上の従業員が勤務している個人事業主名義の事務所なども含まれる)に勤務すれば、70歳未満の従業員は原則として厚生年金の加入者となる

● 健康保険と比較すると、厚生年金の加入手続きが一緒に行われること、適用事業所の条件も類似点があるなど、一緒に考えられることが多い

● 事業所として適当されない事務所であっても、次の条件を満たすことで適用事業所となれる
 従業員の半数以上が厚生年金の適用事業所となることに同意している
 厚生労働大臣の認可を受けた

● 第2号被保険者の区分は次の通りである
 第1号厚生年金被保険者:第2号~第4号厚生年金被保険者以外の人
 第2号厚生年金被保険者:国家公務員
 第3号厚生年金被保険者:地方公務員
 第4号厚生年金被保険者:私立学校教職員
● 国民年金第3号被保険者は、この第2号被保険者となっている人の配偶者がいなければ該当しない

● パートタイマーやアルバイトも一定の要件を満たすことで厚生年金に加入できるが、日雇い、2か月以内の期間労働者などは加入できない

● 厚生年金の保険料は、会社と本人が折半して負担しており、一般的には会社の給与明細書にて天引きされていることが多い

● 国民年金の保険料は、厚生年金の保険料に含まれているため、自動的に国民年金に第2号被保険者は加入していることになる

● 厚生年金の保険料は、年金事務所にて計算して求めるが、その際に使用されるのが被保険者ごとの標準報酬月額と標準賞与額などがある

● 日本年金機構より、事業主向けの年金制度の情報提供として、「日本年金機構からのお知らせ」が社会保険加入している事業所へ毎月発行されているが、これは日本年金機構のホームページからでもPDF形式でダウンロードできる

年金手帳の各種変更をしておこう

日々の人生を歩むにつれて、結婚、住まいが変わるといった生活環境が変わることはごく普通にあるでしょう。しかし、それらが起きた場合は年金手帳も次のような変更をしておかないといけません。

住所変更をしていないと年金定期便が届かない

年金定期便とは、今までの年金保険料納付の実績、将来の年金支給に関する情報が記載されたお知らせのことで、次の内容を周知させるために郵送しています。

● 年金制度に加入していること

● 年金支給と年金保険料負担の関係、年金制度に対する理解を年金世代、特に若年世代に理解をしてもらうこと

● 国民の年金制度に対する信頼を向上させること

この年金定期便は、年1回、国民年金の加入者の誕生月の2か月前(1日生まれの人は3か月前)に作成されて誕生月に郵送されてきます。この郵送先の住所をしっかりと変更しておかないと、誤った住所先に郵送されてしまう恐れがあります。そのため、変更に関する届出は変更があったらすぐに出しておきましょう。

なお、変更届出先は被保険者の区分ごとに次の通り異なります。

● 国民年金第1号被保険者
市区町村役場の国民年金担当窓口

● 厚生年金加入者(国民年金第2号被保険者)
勤務先の会社

● 国民年金第3号被保険者
第2号被保険者の勤務先の会社

万が一の支給漏れを防ぐために

正しい加入者情報の届出をしていなかったために、支給漏れが発生する恐れがあります。

事例としては、平成29年9月13日に、約598億円という巨額の振替加算(65歳から受け取る基礎年金額に一定額の上乗せをすること)の支給漏れが挙げられます。この金額は、年金の未払額としては、過去に起きた事例を考慮しても過去最大規模で、厚生労働省は日本年金機構に対して同年11月中に全額支給するように指示を出しています。

気になるこの事件が発生原因ですが、日本年金機構の事務処理上で起きたミスが主な原因として挙げられています。しかし、他にも日本年金機構と共済組合との連携不足など3つほど指摘されてもいます。その連携の中には、加入者データも含まれておりました。もし、これが最新かつ正しいデータでなかった場合は、より大きなミスになっていたかもしれません。

こういった不祥事が現実に起きていたことを考慮すると、加入者自身も個人情報が変化した場合は早急に届出を出すことが求められるといえます。

年金手帳は自分の将来のために必要だから大切に保管をしよう

年金手帳について、再発行の流れ、役割、必要になる時、公的年金の仕組みなどを中心に紹介してきました。年金は、主に老後の生活を送るために必要になってくる収入ですが、障害または死亡の時などは障害年金と遺族年金が支給されるなど、日々の生活の中で起きる不測の事態に対する備えという役割もあります。そのためにも、普段から年金手帳は大切に保管しておくことが重要です。そして、万が一無くしたら早急に対応できるようにしておきましょう。