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加給年金について知る

年金制度は、厚生年金、国民年金の枝分かれから始まりますが、その内容はとても複雑です。今回紹介する加給年金もまた複雑な内容です。しかし、その仕組みを知って日々の生活に取り入れることで資産設計の向上が見込めることでしょう。順を追って紹介をしていくので、ぜひとも知っていきましょう。

一定条件を満たすと年金の上乗せができる

加給年金とは、一定の条件を満たした場合に、老齢厚生年金に上乗せされて支給される年金のことです。受給条件等の詳細は後述で紹介しますが、その内容から、「国から支給される家族手当」という認識がなされています。

配偶者と子供がいる場合に適用される


加給年金は、世帯持ちの既婚者つまりは配偶者と子供がいることが前提として成立する年金です。そのため、「未婚者」は対象外です。

その加給年金の金額は次の通りです。

● 配偶者
① 加給年金額:224,300円
② 年齢制限:65歳未満であること(大正15年4月1日以前生まれは年齢制限なし)

● 1人目、2人目の子供
① 加給年金額:各224,300円
② 年齢制限:18歳到達年度の末日までの間の子または1級、2級の障害の状態にある20歳未満の子供

● 3人目以降の子供
① 加給年金額:各74,800円
② 年齢制限:18歳到達年度の末日までの間の子または1級、2級の障害の状態にある20歳未満の子供

ただし、加給年金は、「受給条件を満たしていても届出を出さないと加給年金が受給できない」ということには注意しましょう。

配偶者は生年月日によって特別加算がある

また、加給年金には次の通り配偶者の生年月日に応じた特別加算(平成29年度時点)があります。

● 昭和9年4月2日~昭和15年4月1日
① 特別加算額33,100円
② 加給年金額の合計額257,400円(224,300円 + 33,100円)

● 昭和15年4月2日~昭和16年4月1日
① 特別加算額66,200円
② 加給年金額の合計額290,500円(224,300円 + 66,200円)

● 昭和16年4月2日~昭和17年4月1日
① 特別加算額99,300円
② 加給年金額の合計額323,600円(224,300円 + 99,300円)

● 昭和17年4月2日~昭和18年4月1日
① 特別加算額132,300円
② 加給年金額の合計額356,600円(224,300円 + 132,300円)

● 昭和18年4月2日以後
① 特別加算額165,500円
② 加給年金額の合計額389,800円(224,300円 + 165,500円)

このように生まれた年度が遅いほど、加給加算額が増額されていきます。ただし、配偶者が次の年金を受給中の場合は、支給停止されることに注意しましょう。

● 老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合のみ)

● 退職共済年金(20年以上の加入期間があること)

● 障害年金

加給年金を受け取る条件

加給年金を受給するためには、次の条件を満たさなければなりません。

本人が老齢厚生年金の受給権を取得している

被保険者本人が老齢厚生年金の受給資格を満たすことが必要です。

その受給資格と支給開始年齢は次の通りです。

● 昭和16年4月1日以前および昭和16年4月2日以後
① 老齢基礎年金の受給資格を満たしていること
② 厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上あること(ただし、65歳未満の人に支給する老齢厚生年金は1年以上の被保険者期間が必要)

● 支給開始年齢
① 昭和16年4月1日以前に生まれた人は原則として60歳から支給される
② 昭和16年4月2日以後に生まれた人は60歳~65歳に支給される

厚生年金の被保険者期間が20年以上

厚生年金の被保険者期間が20年以上あることが必要ですが、この仕組みの関係で、加給年金が会社員や公務員を主に対象とした年金であることが分かります。

中高齢の特例(15年~19年の短縮制度)

厚生年金の被保険者期間が20年以上あることが条件になるとは、前述でも紹介した通りですが、厚生年金の中高齢の特例を受けた人でも同様の扱いとなります。

これは、男性なら40歳以降、女性なら35歳以降の年齢で、厚生年金に15年~19年間加入することによって、20年以上の加入期間があるとみなされて年金の受給資格を満たすことができる特例です。

その対象者の生年月日は次の通りです。

● 昭和22年4月1日以前
15年(180月)

● 昭和22年4月1日~昭和23年4月1日
16年(192月)

● 昭和23年4月1日~昭和24年4月1日
17年(204月)

● 昭和24年4月1日~昭和25年4月1日
18年(216月)

● 昭和25年4月1日~昭和26年4月1日
19年(228月)

本特例は、もともとは旧厚生年金保険法で、男性は40歳以降、女性は35歳以降の被保険者の期間が15年以上あれば老齢年金が支給される規定を継承したものです。

ただし、上記の通り、昭和22年4月2日以降に生まれた人から昭和26年4月1日以前に生まれの人の間で期間が徐々に延長されていっています。そして昭和26年4月2日以降に生まれた人に関しては20年となって通常通りの扱いとなります。

このことから、特例という性質もあるとはいえ、経過措置を経た後は実質的にその役目を終えることになることが分かります。なお、本特例は厚生年金のために用意されているため、共済年金などでは利用できないことに注意しましょう。

しかし、その代わりに、昭和31年4月1日までに生まれた人に対して、厚生年金または共済組合(共済年金)の加入期間が、次の通り一定の対象者の生年月日に応じてあれば、やはり年金の受給資格を得ることができるという規定もあります。

● 昭和27年4月1日以前
20年(240月)

● 昭和27年4月2日~昭和28年4月1日
21年(252月)

● 昭和28年4月2日~昭和29年4月1日
22年(264月)

● 昭和29年4月2日~昭和30年4月1日
23年(276月)

● 昭和30年4月2日~昭和31年4月1日
24年(268月)

こちらも従来の厚生年金、共済組合制度の老齢給付における原則的な資格期間を引き継いだものという経緯があるなど中高齢の特例と類似した点があります。その一方で、本特例期間の施行日に34歳未満の人から、徐々に延長され30歳未満の方から原則として25年となっているものの、新制度が実施されるときに新たに年金制度に加入されても、資格期間が満たせるよう配慮されていることなど独自の点もあります。

生計を共にする65歳未満の配偶者

生計を共にする配偶者の年齢が65歳未満であることも条件として必要になってきます。

18歳に達した後の年度末までの子供

一般的に成人と見なされる年齢は20歳ですが、年金の場合、子供の年齢は18歳までとなっています。厳密には、18歳に達した年度末までとなっています。そのため、その年の4月1日~翌年の3月31日までの間に18歳を迎えた場合、翌年度からは加給年金の受給資格を失うことになります。

配偶者と子供に関する年収の条件

また、他にも年収850万円以上を将来的に得られないと認められるという条件もあります。分かりやすくまとめると、年収850万円未満で生計維持している配偶者と子供がいるかどうかということです。これは、将来にわたって加給年金が実質的な家族手当である現状を考慮してのことです。仮に850万以上であれば、一般的には加給年金も必要なくなると判断されるということです。

ただし、現時点で850万以上であっても、5年以内に定年退職などでその基準を見たさ亡くなれば、生計維持として認められる場合があります。

配偶者の加給年金の振替加算と金額について

加給年金は条件を見たさなくなれば打ち切られますが、それを補う制度として、「振替加算」という仕組みがあります。

配偶者が65歳になると振替加算が受給可能

振替加算とは、被保険者が受給している老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額の対象者である配偶者が65歳になって、加給年金額が打ち切られた時に、その配偶者が老齢基礎年金を受給できる場合、一定の条件を満たすことで配偶者自身の老齢基礎年金に加算がされるというものです。

代替えのような役割を果たしていることから、「振替加算」と呼ばれています。

また、配偶者が65歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合は、被保険者が受給している老齢厚生年金や障害厚生年金の加給年金額の対象者でなかったとしても、一定の条件を満たすことで、やはり配偶者自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。

老齢基礎年金と振替加算を合算した額を受給

前述の仕組みによって、老齢基礎年金と振替加算が合算した年金額を配偶者は受給することになります。振替加算によって、加給年金の穴埋めが実質的になされるので条件を満たしせるのかどうかを確認しましょう。

振替加算の対象条件は3つ

振替加算の対象者となる配偶者は、次の条件が求められます。

● 大正15年4月2日から昭和41年4月1日以前の間に生まれていること

● 老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受給している場合は、厚生老齢年金および共済組合等の加入期間を併せて240月未満であること

● 共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入年数期間を満たしていること(その年数は中高齢の特例の時と同様)

● 年収が850万円未満であること

これらの条件は、被保険者が老齢基礎年金の受給資格を持った満65歳到達時において、受給している年金の加給年金額の対象となっていることも前提にあります。

加給年金の申請方法

ここまで加給年金に関して、その仕組みと関連する規定などを中心に紹介してきました。ここからは、具体的な申請方法を紹介します。

必要な書類は3種類


申請するために必要になってくるのは次の通り3種類の書類になります。

● 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(記載事項証明書)
使用目的は、受給権者と加給年金額の対象者(配偶者や子供)の身分関係の確認

● 世帯全員の住民票の写し
① 続柄や筆頭者は記載されていること
② 使用目的は、給権者と加給年金額の対象者(配偶者や子)の生計同一関係かの確認

● 加給年金額の対象者(配偶者や子供)の所得証明書、非課税証明書
① これはいずれかひとつ準備すればよい
② 使用目的は、加給年金額の対象者(配偶者や子供)が受給権者によって生計維持されているかを確認

なお、書類を集める際は、次の点に注意しましょう。

● 全て原本を用意する

● 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本および世帯全員の住民票の写しは、加算開始日より後に発行されたもので、かつ提出日の6ヶ月以内のものを準備する

● 加給年金額対象者の子供に障害がある場合の診断書は、年金事務所で確認する

年金事務所に必要書類を提出

書類を一通り揃えたら、いよいよ申請の段階になりますが、これは年金事務所の窓口で行うことになります。ここは、保険料免除や納付猶予の時の提出先になるなど、原則として年金のことはこの施設に行くことになります。

ただ、年金事務所などでの対応で不明な点があっても何らかの事情で訪問ができない場合などは、ねんきんダイヤルへ問い合わせることもできます。

条件を把握してもらい忘れのないように

ここまで、加給年金についてその仕組みと申請方法などを中心に紹介しました。

他の年金と同様に、原則として申請をしなければ受給できない年金です。そのためせっかく受給条件を満たしているのにそれを忘れていたということもよくあります。日頃から、本年金について理解を進めておくことと条件を把握しておくことが重要です。